【ハルニレ】は、ニレ科ニレ属の樹木です。
ニレ属の樹は、日本にはアキニレ・ハルニレ・オヒョウといった種類があります。
このうち、北海道に生育しているのが、【ハルニレ】と【オヒョウ】です。
同じニレ属の樹ということで、『オヒョウニレ』と呼ばれることもあります。
ハルニレとオヒョウは、木材としてはだいたい同じように扱われています。
両方をひとくくりにして、『ニレ』という扱いを受けているのが一般的かもしれません。
木材としての評価は、どちらかというとハルニレのほうがやや良質、という位置づけになるようです。
ハルニレとオヒョウでは、葉の形が違うので、見分けることは可能です。
ですが、落葉してしまった後は、その最大の違いである【葉】で区別することができなくなります。
北海道では、雪を利用して冬に山林を伐採することが多いので、この時期はどちらの樹なのか、見分けがつかなくなることもあったとか。
「ニレを伐採してみて、切り口から赤みを帯びた色が見えると、ああハルニレだと喜んだ」
…昔、山林で働いていた人から、そういう話を聞いたことがあります。
前項では神話におけるハルニレの伝承についてふれましたが、実はアイヌ神話には、オヒョウも登場しています。
それによると、雷神と結婚したのはハルニレの精・チキサニと、オヒョウの精・アトニの二人だというのです。
二人は姉妹であったそうで、それぞれ子供を産みました。
樹心が赤いハルニレの精の子は顔が赤く、木肌が白いオヒョウの精の子は顔が白かったそうです。
アイヌの伝統工芸に、アツシ織というものがあります。
オヒョウの樹皮の繊維から作られたので、こう呼ばれているのです。
イラスト【アトニとチキサニ】
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